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医療サービスサービスの平等な普及のために

筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群 パブリックヘルス学位プログラム

小宮山潤さん

文責:筑波大学 社会・国際学群 社会学類3年 加藤風花

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  人々の健康に関するサービスとして多くの人が思い浮かべるのは、自分が病気になったときに病院で施されるような医療サービスではないでしょうか。病院で提供される医療サービスは、病気を患ったり怪我をしたりした人々の回復に直接かかわるものですが、すべての人に平等にもたらされているとは言えない現状があります。小宮山さんは、心臓リハビリテーションという医療サービスをより多くの人に提供するための研究をしています。

心臓リハビリテーションの理想と現実

 心臓リハビリテーションとは、心筋梗塞や狭心症といった心臓病の患者さんに対して病院でおこなわれる、運動療法や食生活指導、カウンセリング等の総合的なプログラムのことです。心臓病の患者さんが体力を取り戻すために有効であるとされています。しかし、その実施率は高くはありません。また、病院や地域、性別等の要因によって実施率は異なっています。小宮山さんは、理学療法士として、実際に患者さんに心臓リハビリテーションを実施する中で、「目の前の人を救うだけでなく、社会全体を通してさらにリハビリテーションが適切に行われるようにすることはできないか」と考えました。

 以前は心筋梗塞で亡くなる方が多かったのですが、現在は、医療の水準が上がり、心筋梗塞を発症しても助かりやすくなっています。一方で、心筋梗塞になった人は年を重ねてから、心不全になる可能性が大きいのです。そのような状況を予防するために、心臓リハビリテーションをすることが必要です。しかし、病院ごとにその実施率は異なり、心臓リハビリテーションという治療手段があること自体がきちんと説明されない場合も多いのです。小宮山さんは、「患者さんは最初に担ぎ込まれる病院を選べない。どの病院でも同じ水準の医療を提供し、せめて心臓リハビリテーションを受けるか選べるようにする必要がある」と言います。

医療費のデータを入手する ――地方自治体との連携とその限界

 心臓リハビリテーションの普及のため、それに関連するサービスが病院で今どの程度提供されているのか、そしてこれからどのような人に特にサービスを提供すべきかを明らかにすることを目的に小宮山さんは研究を行いました。小宮山さんはまず、高齢の心臓病患者の心臓リハビリテーション参加率を調べるために医療費の請求データである「レセプト」を分析しました。レセプトとは、病院で治療を受けた後に作られる診療費の明細書のことです。日本全体のレセプトを利用しようとすると、国に許可を申請することになるため、研究費の有無や手続上の課題が発生します。小宮山さんの所属する田宮研究室ではつくば市と提携を結んでおり、つくば市のデータを使用することができるようになっています。さらに、このデータは介護保険と医療保険のレセプトを結合したデータになっています。介護・医療の両方の情報を利用することで、より現実的な解析に繋がります。そのため、小宮山さんはつくば市のレセプトを用いて研究を行いました。

 しかし、レセプトの情報から現状のすべてを理解できるわけではありません。自治体から入手できるデータは自営業者や高齢者の公的医療保険・介護保険に関するものに限られ、その他の全国健康保険協会等が有するレセプトデータは入手できません。自治体の持っているデータは個人事業主や高齢者に偏っており、普通の会社員や公務員のような人の入っている公的医療保険とは対象となる人が異なっています。そのため、小宮山さんは現在、高齢の心臓病患者の医療費のデータに絞って研究しています。このように、自治体からレセプトを入手するという方法には、限界もあるのです。

これまでの研究の成果と今後の課題

 小宮山さんのこれまでの研究で、つくば市内の高齢心臓病患者の外来診療における心臓リハビリテーションの実施率は9.0%であることが分かりました。また、実施率には性別や心臓病の種類、過去の入院中の心臓リハビリテーション実施等の要因が関係することも明らかになっています。今後は、外来心臓リハビリテーションを受ける可能性の低い患者に対してどのようにアプローチするかということが課題となってきます。また、心臓リハビリテーションを実施できるにもかかわらず、患者さんに適切な情報提供ができていない病院もあるそうです。心臓リハビリテーションを実施できるすべての病院が心臓リハビリテーションを推進するような環境作りも今後の研究内容の一つです。さらに、心臓リハビリテーションの全国的な推進のためには、つくば市以外の地域についても同様の調査をする必要があります。

医療サービス研究とSDGs

 小宮山さんのこれまでの研究で、つくば市内の高齢心臓病患者の外来診療における心臓リハビリテーションの実施率は9.0%であることが分かりました。また、実施率には性別や心臓病の種類、過去の入院中の心臓リハビリテーション実施等の要因が関係することも明らかになっています。今後は、外来心臓リハビリテーションを受ける可能性の低い患者に対してどのようにアプローチするかということが課題となってきます。また、心臓リハビリテーションを実施できるにもかかわらず、患者さんに適切な情報提供ができていない病院もあるそうです。心臓リハビリテーションを実施できるすべての病院が心臓リハビリテーションを推進するような環境作りも今後の研究内容の一つです。さらに、心臓リハビリテーションの全国的な推進のためには、つくば市以外の地域についても同様の調査をする必要があります。

 どの病院に行くかという選択肢は、地域やその時の状況によって限定されます。そのため、どの病院に行っても平等に医療サービスを受けられるような社会づくりが求められています。医療サービスに関する研究は、平等な医療サービスを提供し「すべての人に健康と福祉を」もたらすために重要なのです。小宮山さんも、心臓リハビリテーションという一つの医療サービスをより多くの人に提供するために、研究を続けています。

医療サービスサービスの平等な普及のために

筑波大学大学院 人間総合科学学術院 人間総合科学研究群 パブリックヘルス学位プログラム

小宮山潤さん

文責:筑波大学 社会・国際学群 社会学類3年 加藤風花

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